マジカルアンコール

「やあやあ、ご機嫌いかがかな、こんばんは愛しの宗像くん!
あ、まだ切るなよ、出来るだけ手短にすますつもりだから。
きみはただ留守番電話メッセージのように、僕の伝言を聞いていればいいからね。

では改めまして伝言使い、いや理詰めの魔法使いこと黒神真黒だ。
急な話だけど、一人旅に出ることに決めてさ。ちょっと宇宙旅行へ、ロケットに乗って月を壊しに。

あはは! 新しいだろう、火葬に土葬に水葬と、ありとあらゆる墓を網羅した地下九階にさえクレーターの墓穴なんてのは無かったよね。
せっかくだから研究熱心に寝心地でも報告したいところだが、フラスコ計画を自ら降りた身、今回はどうかご容赦願おう。
で、まあそのマグロケットが飛び立つ前にホウ・レン・ソウで電話をかけてる訳だけれど……
やだな、そんな金切り声! 耳が痛い。参ったな……、宗像くんに怒られるのは初めてだから、怖いね。

んー、他に方法? 無いよ。
現状を解析して弾き出した全96通りのプランの中じゃ、これが最適解だった。
え? ロケットに乗ったらぶち殺す? ごめん、もうカウントダウンしちゃってる。
はは、心配いらないよ――僕はただ妹の後を追うだけ。

実はね、三分前に一足先に、めだかちゃんを乗せた同じ型の機体が打ち上がってるんだ。
発射から帰還までの航行軌道もプログラム済みで、ちゃーんと帰りの燃料も積んだそれは、
月を眺め、地球を一周して戻ってくるだろう。僕の息のかかった整備士達の粋なはからいでね。

ああ、だってあの子、世の中を知りたがってたから。
そんなものだと語っていいほど世の中を知らなかっためだかちゃんに、
お兄ちゃんが地球の青さを、空から教えてあげようと思って。

「黒幕島」……、軍艦塔に家出していても、出し抜いて家長を継がれても、
僕が黒神家の長兄で、あの子が妹であることに変わりはないのにね。
死ぬのも大切な仕事と言うなら、年上がまずお手本を見せなくちゃ。

おおっと、ついつい長話になってしまったかな。
じゃ、お休みなさい……。楽しかった。宗像くんに戦い方を教えてる間、僕に弟が出来たみたいで。
僕はいつでも妹が一番だったけれど、妹を介さず付き合ったのは、きみがきっと最初で最後。
まるでお兄ちゃんになれたように楽しかったよ。」