昔から、僕が出歩くとろくなことがない。
身分不相応にも友達などと遊んだ日には特に、こんな風に何かしら必ず不幸の巻き添えにしてしまう。
創刊半世紀を数える少年漫画雑誌の記念号は目の前で売り切れたし、
ファストフード店の高価な新メニューは食べかけで手を滑らせ床に落としてしまうし、
二人そろって充電を忘れていた携帯電話は途中で電池切れ、
映画CMの一環で見られるはずの限定ARを読み込めなかったし。
不完全燃焼の日曜日、夏の日射しに焼かれたアスファルトの帰路につき思うのは……
『明日は快晴』だなんて抜かした昨日の天気予報士、出てこい!
急な横殴りの雨に見舞われ、ばしゃばしゃ水たまりを蹴散らして逃げながらもう泣きそう
(なんと持っていた折り畳み傘まで開いた瞬間に骨が折れた)。
通り過ぎた電話ボックスは二人じゃさすがに狭く、
服の中でこそないものの二人分の鞄を預かり、僕は人吉くんを先に促して歩道橋を駆け上がる。
ひとまず雨露をしのごうと公園のベンチに滑り込み、荷物と腰を下ろした。
降りかかった不運をハンカチでせわしなく拭うのにやっきになって―――
やるせなさにうつむいた足元のぬかるみが明るみへと変わった時、やっと上を向く余裕が出来たのだ。
――降りしきる雨の向こうは晴れ渡り、大きな虹が架かっていた。
暗雲を追って現れた晴れ間に降る、いわゆる狐の嫁入りという天気。
条件が絶妙に揃ったのか、色の層もはっきりと数えられるほど鮮やかだ。
ここまで散々な目に遭った僕は、だから、ほら見て綺麗。と素直にほめようとしたけれど。
「……」
そっと見た人吉くんの目は虹にくぎ付けだった。
僕が綺麗だと言ったら、今にもつられて同じ言葉を言いそうだ。
いつものように僕に賛成して、僕についてきて、ろくな目に遭わない今日の締めくくりらしく。
……それはなんだか、あんまりだ。一瞬息を止めて黙る。そうして本当に僕が耳を傾けて、
隣に座る人吉くんにほんの少し寄りかかるのと、声を聞いたのは同時だった。
「つーか、宗像先輩と出かけると、いつもいいことがありますねえ。」
自分のものでもないのに、どこか自慢げに虹を指さし――
まるで波線でふちどったよう、人吉くんはのどかに反対意見を述べた。
「……うん、」
あれれ、言い負かされてる、一報的に。
景色をほめようとした僕と僕をほめてくれた人吉くんとじゃあもう、勝負にならない。
携帯電話は充電切れ、写真にも納められないし、あの眩しげな眼差しと虹は一生この目に焼き付けるしか。
人吉くんの細めた裸眼には、虹色がはっきり映り込む。
「彼が眼鏡をかけていなくて良かった」とひそかに僕が胸を撫でおろしたともつゆしらず、
その美しさはやっぱり、覗き込んで綺麗な色の層を数えてみたくなるほどで。
結局その裸眼はたった数か月間で見納めとなったのだけれど、僕は懲りずに、
眼鏡をかけた人吉くんを天気予報が晴れの日に外に遊びに誘ってしまう。
今度は予報通り雨は降らなかったので、僕らはかたつむり並みに歩みを遅らせて帰り、
その夜には、今日あったたくさんのいいことを、お互い一々電話で報告することとなった。