僕が普通で君が普通であるならばふたりを組み合わせたって普通にしかならない。
僕は君に普通のひとでいてほしいと思う。普通の男の子で、普通の高校生で、普通の死神代行。
それが黒崎、君に対して僕が思い描く理想像のすべてです。
もちろん、普通、という意味は二人の間で少し捉え方が違っているかもしれないけれど。
その意味を似たものに近づける努力をするって前提で二・三、例としてあげてみる。普通らしいひととは。
まずは、怪我をしたらちゃんと痛いと訴えるひとであってほしい。僕は聴診器や薬なんか持っていないから、
言われなければ気づけないかもしれない。でも切り傷くらいは我慢してほしい……かもしれない。
君は男だからなんて、かびくさい冗談は関係なく。
次に「いただきます」と「ごちそうさま」がきちんと言えるひと。基本中の基本ってことで、
毎日三度も繰りかえすことくらい気持ちよく過ごしたいから。言わなかったら次から三食ともさば味噌煮を……
作ったら逆に喜ばれるだろうか。あほらしい。
そしてこれは別にどうでもいいけど、知らなくて全然構わないけど、万が一にも聞こえていたら忘れず
覚えておけ。たまには、ふと思い出したその時でいいから、僕の身体とか言葉を欲しがるように。
不安になる前に、多分僕からも欲しいと伝えるだろう。
もしも君がその力強い腕をなくして護るための刀を握れなくなったり、あの黒い服が身の丈に合わない
ほど背が伸びて、僕を一気に追い越し手も届かないほど大きくなってしまっても。
君が普通であるなら僕もせいいっぱいの普通で答えるつもり。
春は、桜の散る昼下がりに、何か甘いおいしいものを分けあって食べる。
夏は、日傘の影に身を潜め、濃い潮風のなかしょっぱい口づけを交わす。
秋は、焚火にあたりながら、頬にさす赤みと紅葉のそれをくらべてみて。
冬は、肌を重ねた次の朝に、ごつごつした剥き出しの肩に布団をかけた。
好きです。今までずっと好きでした。明日もきっと好きでしょうと毎晩、予報。
普通に好きになって普通らしい暮らしを二人でする。
普通にさよならするのはあまり考えたくないけれど、さよならがこの世によくあることだとも知っている。
どうせお互いに普通の生きものでしかない。いつかこの見渡せるかぎりの世界から君が目を
背けたくなったら、それを見ないために普通らしく僕の胸にすがって泣きながら眠ればいいと、願って。