走れクラスタギャロップ

にぎわう駅前に差し掛かってもオレがうつむかずに済んだのは、学校帰りで刻阪が隣にいるのはもちろん、
配られた紙面を覗き込む人々の心が明るく踊っていたからだろう。速報ー、号外でーす、との朗らかな声に
つられたオレはつい小走りで刻阪の手を引いてしまう、そうして肩を寄せあい覗き込んだ一面には、
グランプリ優勝なる大きな見出しと、われらが誇る群馬県ご当地キャラのピースサイン(の、ポーズ)。

「でかした! 全国のゆるキャラで一番って、すごくないか」
「すげェよ、そりゃこうして載るはずだ!」

通りすがりに舞い込んだ吉報に、勢い余ってハイタッチ。声を上げ続ける配布員さんの周りにはあっという間
に通行人が集まって二人で一枚しかもらえなかったけれど、こんなに素敵なグッドニュース、分かちあった
ところで減るものじゃなし。二人で聞けば喜びも二倍――大人気でかわいいあの子の、一等賞を祝いたい。

「あー、めでたい話だなあ」
「めでてェなァ」
「だってさ、全国優勝ってことは、つまり全国金賞だぞ」
「全国、金賞……!!」

祝砲さながら息白く、ぱかんと口が開いてしまう。(写真の中のふかふかしてそうなブラウンのたてがみ、
手作りの草冠のような素朴な青い帽子、今更ながら、この無邪気さで全国を制したと言うのか……!?)
恐る恐る、親指の腹でその頭をなでてみた。思い返せば一年前には三位に甘んじ涙を飲んでいたはずなのに、
自分達と同じくらいだと見受けるその身長も、七歳という年も変わらないまま、今や号外の表紙を飾って。

「大きくなったよなあ」。親ばかみたいに刻阪と笑う、オレも少しは大きくなれたかな?

この一年ずっと自分達だけのし上がることに命を懸けて、当然、その熱心に虚栄は欠片もなかったけれど。
ヨソの一等賞を自分のことのように喜べる、可愛いものを可愛がれる余裕は、確かに久しいものだった。

世界を揺るがす小さなニュースで知る――これはきっと、愛でたい話。
愛すべきものをちゃんと愛せる限り、オレ達はずっと自由の身。
……ただし自由の余り浮かれすぎても打算に走る、あわよくばあの子より人気者になっちゃったりして。

「もしもだけどさ。オレ達もスゲー音楽演れたら、臨時で号外とか出るんじゃね」
「なにそれ出してほしい。むしろ読みたい、読ませろ」
「出たらな。毎晩でも読み聞かせてやる。無論、飽きて眠るまで」

寝る子は育つ、たとえ永遠の七歳でも、オレ達が十七歳になってからも、来年になってもまた。まずは
誓いの証のこの号外、「叶う時」までどちらが大事に取っておくか、ゆるーくじゃんけんででも決めようか。