悪いことをして、よく押し入れに閉じ込められるのだ、と片方の少年は声を潜めて打ち明けた。
夕暮れる公園の片隅、ジャングルジムの影踏んで――右と左で微妙に髪質の違う、ちぐはぐ頭が項垂れる。
膝を抱える姿は自分よりもずっと幼いのに、実際は僕の方がひとつ年下だなんて、信じられない。
僕と彼と、育った家が違うだけで、もともと似た者同士なのに。
恐る恐る上げる眼差しもほら、見つめ合ったら鏡のように。
「夜はずっと、押し入れの中……。
昼間にお手伝いをしようとしても、父さんが怖い顔で、急に押し込まれる時があって。」
「えっ……、うちは全然違うよ。僕がお父さんをお手伝いしたら、いい子だねって、ほめてくれるんだ」
「……うらやましいなァ……」
重たげな肩はますます落ち込んで、僕はなぐさめの言葉に詰まってしまう。
話している間にも空はどんどん暗くなっていく、このまま夜闇で帰り道も見えなくなってしまったら、
僕たちはどこで眠ればいいのだろう。いっそにわか雨でも降り出せば、お父さんが傘を持って迎えに来てくれるかもしれない。
暖かな家に帰った僕は、また明日も、お父さんのお手伝いを頼まれることだろう。
――ああ、なら、二人で一緒にほめてもらえばいいじゃないか、良いことは、誰かと分かち合わなきゃ。
「ねえ。帰りたくないなら、うちにおいでよ。僕の家の子になっちゃわない?」
「…………」
縮こまる彼の正面にしゃがんで、震える肩にそっと手を置いた。
上げた顔はびしょびしょに泣き濡れていて、その涙は悲しみのせいだろうか、あるいはたった今のお誘いが
嬉しかったためか判断しかねたが、もれる嗚咽を噛み殺しながら、彼は細い首をのろのろと横に振る。
絞り出された言葉が地面に降り落ちていく、それは、涙の粒と同じ速さで。
「オレが、悪い子だから……、外が見えねェように、閉じ込められるんだ。父さんは、悪くねェ。」
「……? 違うよ。違うでしょう? だって僕の目には、きみは悪者には見えないよ。」
「………………でも……、……オレにはお前が、悪い子に、『見』える…………」
「……え?」
(よそはよそ、うちはうち、比べたって仕方ないって、他人なんかどうでもいいって。)
お父さんは僕を大事に見守ってくれる、愉快な人ゴミにも連れてってくれるし、僕が働いたらほめてくれる。
僕を悪い子だなんて、何を言い出す。他所の家のお父さんみたいな怖い顔、目の敵にして、憎悪して。
「僕は、いい子なんだ。悪い子に見えるなら、それはお前の目が悪いだけだっ。馬鹿にするな!!!」
「……う、うぅっ……!」
頭を抱えて呻いたかと思うと、少年はがばっと立ち上がり、こちらに目もくれずに逃げ出した。
追いかけて引き止めることは、無意味だと思った。あんなに一生懸命走って急いで帰ったって、
お父さんはおかえりも言ってくれないだろうに。どころか、自ら手にかけるのが怖いから、いっそ誰か潰してくれと
――怖いな、偶然そんな家の子に生まれなくて、僕は本当に幸せなのだ。
ああぁ、一緒に遊べたらどんなに楽しいだろうと勇気を出して近づいてみたけど、
よそのうちの子の面倒まで見るほど、僕は暇でもないのだった。僕は忙しい。
生まれつきの視力で心を「見」て、目に映るたくさんの人をコントロールして、
これからもお父さんの“生きがい”を喜んで手伝いたい。
たった二つの眼であり、愛息子である限り。