正義の味方は遅れてやって来る。
いや、出来るだけ早く駆けつけたいのはやまやまなのだが、正義の味方だって寝坊する時があるのだ。
だからって、草木も眠る丑三つ時、刀を抜きながらあくびを連発する昼夜逆転丸を責めないでやって欲しい。
それこそが、眠気を操りすべての生き物をねぐらへ誘う、ヤコセーの常套手段なのだから。
かくいう訳で今週の乱、倒せヤコセーかがやけ明星、遅れてお出ましは、昼夜逆転丸!!!
「食らえヤコセー!!”珈琲豆粉砕”(カフェインパクト)!!!」
「ギャアアアア!! アト十分、イヤ五分ダケデモ、寝カセテクレェ……!!!」
貧しさにあえぐ村民たちから奪った負のエネルギー、そして大好物である深夜の真っ暗闇が、
ヤコセー達の身体から一気に抜けていく。闘いを終わらせられるのは、いつも徹夜明けだ。
山の稜線からにじみ出す朝日に照らされ、みるみるうちにしぼみ、
ついに干し大根のように横たわる姿を見下ろす、昼夜逆転丸の目に勝利の興奮はない。
まだほんの童なのだ。殺伐とした戦いを繰り返し、結末はいつもこう………………
いや、本当は眠いだけなんでござるが。
「……永久の眠りにつくがよい。
来世では、拙者のように夜戦う者に、夜行性の力を貸してやって欲しいでござる」
……勘違いしないで欲しいのは、これは敵の攻撃を受けて出るあくびで、
だから涙が、こんなに涙が、とめどなくこぼれるのでござる。
斬り捨てて死体の山を築いた後、木の下に埋めて弔う作業を、誰にも無駄とは言わせない。
生を受けた時のように泣きながら、濡らした袖で懐から取り出す包みの中身は、
じいやに持たされた清めの塩だ。殺生を行っていることを忘れるなと、墓をたてよと、言いつけられ。
正義の味方が遅れてやってくるのは、正義の味方が早くはいけないからだ。
全ての敵の眠りを見届けてから、あちらの枕へ、いつかちょんまげ頭を載せるまでは。